日本徒手療法学会発足について

 このたび日本徒手療法学会を発足いたしましたのでご報告いたします。 

 本学会は「臨床家のための理論的・科学的徒手療法の発展」を目的とし「流行に惑わされない」「真実を受け入れ,真実を伝える」ことを心がけていく所存でございます。

 根拠を重視する今日,その根拠を臨床に生かすためには理論的思考を実践していることが大前提であります。一部の概念・知識・手技へ固執したり,「流行(トピックス)」を作る内容では,最初の満足感はありますが,評価に対する意識そして理論的思考が少なくなります.結果として「臨床推論」とういよりむしろ「直感に頼る徒手療法」となります。「直感に頼る徒手療法」であると,土台言い換えれば患者治療における意思決定に軸がないため,他者の意見・研究による根拠に大きく振り回されたり,根拠を批判として受け取ることが多くなります。理学療法士は「直感に頼る徒手療法」ではなく,解剖・運動学など既存の知識を可能な範囲で利用し「理論的に考える徒手療法」を学び,学んでいる結果を科学的根拠として追求する(研究者へ)ことが必要と考えます。

 本学会では「臨床家のため」を目標に置いています。そのためには治療手技も大事ではありますが,評価・病態把握の重要性を今まで以上に強く訴えていきます。患者様を治療・管理できないのは治療手技が不十分というより,評価・病態把握が不十分なことに原因が多いように考えています。本学会では臨床家の先生にもご活躍して頂くよう,A=Bのようなマニュアル的かつ,思考する必要がない徒手療法ではなく,目の前の患者様を純粋に評価して,その評価に基づき純粋に病態を推測することで治療が組み立てられるよう努めて参りたいと存じます。

 また,本学会は「真実を受け入れ,真実を伝える」ことも忘れないよう努めて参ります。代表的な例として,徒手療法の歴史を適切に皆様に伝え,徒手療法の先駆者の考え・実践してきたことを後世に伝える責任を遂行いたします。このような徒手療法の歴史を含め,真の情報を提供していきたいと考えています。その他,徒手療法に関した話題で最近世界(英語論文)で何が言われているのか,など情報も提供していく所存です。

 本学会では,上記に例として挙げた国内で生じてきた多くの誤解・問題を解決し,理論的・科学的な徒手療法を発展させて参る所存でございます。皆様のご指導・ご協力をお願い申し上げます。
 

                                  平成21年 1月13日
                                    会長 佐藤友紀